五月病を漢方で乗り切る!〜第145回 美泉堂薬局 健康セミナーより〜
「朝起きるのがつらい」「やる気が出ない」「眠れない」「なんとなくイライラする」——そんな症状、5月ごろに感じたことはありませんか?
今回は第145回健康セミナー「五月病を漢方で乗り切る!」でお話しした内容をまとめています。
西洋医学では原因がはっきりしない「五月病」も、漢方の視点で見ると、体に起きていることが見えてきます。
そもそも「五月病」とは?
五月病は正式な病名ではありません。春先に起こりやすい心身の不調を総称して「五月病」と呼んでいます。
主な症状
- 朝起きるのがつらい
- やる気・食欲がない
- 眠れない、眠りが浅い
- イライラ・不安感がある
- 喉が詰まったような感じがする
2〜3個当てはまる方は要注意。「病院に行くほどではないけど、なんとなくつらい」という状態が典型的な五月病です。
原因は「気の持ちよう」ではなく、自律神経の乱れや気候の変化など、体の変化によるものです。冬から春にかけての急激な気温・日照の変化が、体の不調を引き起こします。
漢方の基本:「気・血・水」
漢方では、人の体を「気・血・水」の3つで考えます。
五月病では主に「気」と「血」の乱れが関係しています。
| 意味 | わかりやすく言うと | |
|---|---|---|
| 気 | 目に見えないエネルギー | スマホの電波・バッテリー |
| 血 | 目に見える栄養 | スマホ本体 |
| 水 | その他の潤い | — |
4つの乱れパターン
① 気虚(ききょ):気(エネルギー)が不足した状態
→ やる気がない、食欲がない
② 気滞(きたい):気が滞った(詰まった)状態
→ イライラ、不安感、喉の詰まり感(梅核気)
💡 梅核気(ばいかくき)とは?
梅の種が喉に詰まったような感覚が続く症状。内視鏡やレントゲンでは異常が見つからないのに、飲み込もうとしても吐き出そうとしてもすっきりしない。東洋医学では2000年前からこの症状が確認されていて、古典書にも記載されています。
③ 血虚(けっきょ):血(栄養)が不足した状態
→ 眠れない、眠りが浅い
④ 瘀血(おけつ):血が滞った状態
→ 痛み、だるさ
漢方の基本:「陰陽」
漢方では万物を「陰」と「陽」に分けて考えます。春は陽のエネルギーがどんどん増える季節。日照時間が長くなり、土筆(つくし)や筍(たけのこ)、タラの芽が芽吹くように、自然界でも「陽」が一気に表れてきます。
この陽の増加に対して陰(血)が追いつかなくなると、「陰虚」の状態となり、眠れない・眠りが浅いという症状が起こりやすくなります。
漢方の基本:「五行(木・火・土・金・水)」
漢方を語るうえで欠かせないのが五行です。自然界のすべてを「木・火・土・金・水」の5つに分類して考えます。
この五行は、体の5つの臓器(肝・心・脾・肺・腎)にも対応しています。
| 五行 | 季節 | 臓器 | 主な不調 |
|---|---|---|---|
| 木 | 春 | 肝 | イライラ、ストレス |
| 火 | 夏 | 心 | 不安、動悸 |
| 土 | 梅雨〜晩夏 | 脾 | 胃腸の不調 |
| 金 | 秋 | 肺 | 呼吸器の不調 |
| 水 | 冬 | 腎 | 疲れ、だるさ |
春は「木・肝」の季節。肝の不調(気の滞り)が起こりやすく、そこから「心」にも影響が出てきます。
五月病の対応では、主に「肝・心・腎」に作用する漢方薬を選びます。
五月病に使われる漢方薬
| 症状 | 漢方薬 |
|---|---|
| イライラ・不安・喉の詰まり感 | 加味逍遙散(かみしょうようさん) |
| 喉の詰まり感(梅核気)が強い | 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) |
| 動機・肩こり | 冠心逐瘀丹(かんしんちくおたん) |
| 全体的な疲れ・気力低下 | 八味地黄丸(はちみじおうがん) |
※ 症状やタイプによって処方は異なります。詳しくはご相談ください。
自分でできる養生法
① 深呼吸「4・6呼吸法」
4秒で吸って、6秒かけて吐く。これを1日2〜3分、繰り返すだけ。
- 吸うのは鼻から
- 吐くのは口をすぼめてゆっくり
- 背筋を伸ばして行う
- 6回繰り返すと約1分
最初はしんどく感じるかもしれません。無理せず、できる範囲で少しずつ慣らしていきましょう。
② 朝日を浴びる
朝起きたら、まずカーテンを開けて太陽の方向を向く。それだけで1日のリセットになります。
おすすめの生活リズム:朝6時起床・夜10時就寝
眠れない原因は「夜」ではなく「朝」にあることが多いです。まず朝日を浴びることから始めましょう。夜9時以降はスマホやテレビを控え、10時には暗くして寝る習慣を。
③ ツボ押し
〈太衝(たいしょう)〉 — イライラ・不安に
足の親指と人差し指の骨が交わるV字の足の甲近くのくぼみ。10秒ほど「痛いけど気持ちいい」程度の強さで押す。お風呂や座っているときに。
〈内関(ないかん)〉 — 眠れない・動悸に
手首の内側の少し上、手首の付け根のしわから指3本分上、2本の筋の間。乗り物酔いの予防にも効果的なツボです。
〈足三里(あしさんり)〉 — 食欲がない・胃腸の不調に
すねの外側、膝のくぼみから指4本分下。松尾芭蕉が旅のお供にお灸を据えたことで有名なツボ。
いずれも10秒×3回程度、思い出したときに押さえてみてください。
春においしい食べ物で養生
春は「ちょっと苦い」旬の食材を積極的に取りましょう。苦み成分が春の陽の高ぶりを整えてくれます。
おすすめの春食材
- たらの芽・山菜・つくし・タケノコ・春キャベツ
- 新玉ねぎ・新生姜
- アサリ・タイ・サワラ
- アスパラガス(福山市・神石高原町も有名な産地です)
また、春の「味」は酸(酸っぱいもの)。梅干しや酢の物を少し取り入れることで、イライラや、だるさが和らぐことがあります。
逆に、スイカなどの夏野菜は今の時期には控えめに。「旬のものを旬の季節に食べる」が基本です。
まとめ
五月病は「気の持ちよう」ではなく、体の変化が原因です。漢方の視点から見ると、気・血・陰陽・五行のバランスが崩れた状態として捉えられます。
今日からできること:
- 深呼吸(4秒吸って6秒吐く)を1日2〜3分
- 朝日を浴びる。朝6時起床・夜10時就寝のリズムを
- ツボ押し(太衝・内関・足三里)をお風呂で
- 旬の春食材・酸っぱいものを食事に取り入れる
つらいと感じたら、一人で抱え込まず、美泉堂薬局にご相談くださいね!
美泉堂薬局 第145回健康セミナー「五月病を漢方で乗り切る!」もご覧ください
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